雨の降らない星では愛せないだろう?

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夢見るアイドルに夢を見る

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また一人、アイドルが去るという。 

 

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最初にこの話を知った時、普通に良い話だなぁと思った。

生活が苦しくて、家庭のために稼ぐなんて昭和のスタアみたいで素敵だと思った。

そして、目的を果たしたタイミングですっぱり芸能界を引退するのもかっこいいと思った。

 

でも、改めてじっくりとこの記事のラジオの書き起こし部分を読んでいると、何故か分からないけれど、とても辛くなってしまった。

 

元々入ったのが本当にお金だった。

 

特に、この一文が、どうしても頭から離れなくて、何が心に引っかかったのか、よく考えてみた。そして、想像してみて、自分に置き換えてみて、分かった。

 

「アイドルになったのは、お金のためだけだった」

"もしも" 私が応援しているアイドルが、こう言い残してアイドルをやめていったとしたら。

想像しただけで、私はとても悲しい。

 

母親から、『いままでごめんね。無理しないで、好きなことをしてください。弟も自立してくれるようになったし、私も私で生活できるから』という手紙が来て」と告白した。

 

このエピソード。普通に読んだら普通に良い話だって思える。

だけど、"もしも" 私が応援しているアイドルがこの手紙を読んで引退を決意したとなれば、話は別。想像してみると、ものすごい痛みを覚える。

 

< 私の好きだった〇〇は、「無理」をしていたの? >

< 私は歌ったり踊ったりしている〇〇が大好きだったけど、〇〇は「好きなことをして」いなかったの? >

< 私が好きだったアイドル〇〇は、「ごめん」と親に謝られるような、そんなお仕事だったの? >

< 私が好きだった〇〇は、〇〇本人の嫌いな〇〇だったの? >

 

こんな無意味な質問を、どうしても、投げ掛けてしまう。

私の前から去ろうとする、その背中に。

 

勿論、本当の事は誰にも分からないし、これが引退理由の全てとは思わない。辞めたいから辞められる、なんてありえない世界だと思っているから。逆に、辞めたくないのに辞める、だって普通にありえる世界でもあるから。

だから、アイドルの卒業理由・引退理由が全て本当だなんて思ってない。それは、アイドルが最後に見せてくれる夢の1つだと思っている。

「学業専念」や「次の夢に挑戦」は優しい嘘。例え、本当の理由が、恋愛スキャンダルだったとしても、イジメからくる精神不安定だったとしても、不人気による損切りだったとしても、契約トラブルだったとしても、素行不良による解雇だったとしても、悲しい現実なんてファンに見せなくていいのである。提供してくれた理想の現実を信じていれば、応援してきたファンは心に区切りをつけることができる。

でも、今回のような理由は、「学業専念」みたいな、その理由を信じることで救われるタイプの公式理由じゃない。

 

断っておくけど、私は橋本さんのファンじゃない。それどころか、乃木坂46も詳しくないし、坂道シリーズやAKBグループのことも一般的な知識でしか知らない。

だから、別にこの感想は、応援してきたファンのものじゃないので、取るに足らないものだと思ってもらえたらいい。

そして、大事なことは、橋本さんのことを非難したりするつもりで書く訳じゃないということ。どうしても間接的にそう見えてしまうかもしれないけれど、その意図がないことだけは分かってもらいたい。

 

橋本さんのファンの人からしてみたら、乃木坂46に入ったきっかけ込みで応援していただろうし、もしかしたらこんな言葉に今更ショックなんて受けないのかもしれない。「よかったね、お金稼げたからこれで卒業できるね」って、祝福してあげられるのかもしれない。

周辺に、橋本さんを応援している人がいないので心情を伺うこともできないし、わざわざネットで調べることもしていないので、何よりも大事にされるべきファンの人の反応っていうのは分からない。

だから、本当にあくまでも、"もしも" 私の応援しているアイドルが「お金のためにアイドルをしていたが、稼ぐ必要がなくなったので好きなことをしたい」という理由を掲げて引退することになったとしたらという想像をした時の、"私の" 気持ちにすぎない。

何度も念を押すけれど、橋本さんについて私がどうこう言うつもりはないし、そんな権利がないことは重々承知している。

 

 

一つ、この件から連想して思い出したのが、モーニング娘。7期メンバーの久住小春ちゃんのことだ。

小春は、2005年に12歳でモーニング娘。に7期メンバーとして単独加入。後にも先にも例を見ないほど超絶推されであった。「ミラクル」と称され、コンサートツアータイトルにも「小春ちゃんいらっしゃい」と名前が入れられるほど。TVアニメ『きらりん☆レボリューション』の主役を務め、月島きらりとしてソロ活動も活発に行い、現在のアイドル世代に影響を与えたアイドルとして名を挙げられるほどの華々しさだった。しかし、モーニング娘。としての活動は短かった。17歳で卒業し、ファッションモデルに転身した。

そこまではなんの問題もなかった。若いうちに新しい夢を追いかける小春を、応援していたファンは多かったと思う。しかし、最近になってモーニング娘。時代を否定するような発言がラジオにて飛び出し、大炎上した。

 

「今だったら取り返しがつくと思ったんですよ」
「(やめて)すごい正解。ばっちしでした」

「芸能界に入りたくて、モーニング娘。に入ったんですよ」

「ステップアップ」

「女性から支持を受けたかったんですよ。アイドルだと男の人に媚びてるみたいな」

 

 MBSラジオヤングタウン土曜日」 2013年1月19日

久住小春「モー娘。は踏み台」、番組での発言に道重さゆみ悲しむ。 | Narinari.com

 

言っておくけど、小春のエキセントリックな性格なんて今に始まったことではない。理解しているつもりだった。

だけどやっぱり、アイドル時代を全否定されると悲しい。好きになった姿を、本人は好きじゃなかったというのだから。

 

今回の橋本さんの引退理由も、ファンをこんな気持ちにさせはしないだろうか。

 

元々アイドルを志したきっかけが「ロケ弁を食べられるから」だったとしても。

活動していくうちに、きっかけ以上の動機を見出せはしなかったんだ。

お金を稼ぐ必要がなくなったらすぐにやめたくなるような、そんな場所だったんだ。

いつでもやめられるくらいの気持ちでステージに立っていたんだ。

ステージ上に、新しい夢を見つけることはなかったんだ。

希望や野望や夢や憧れや、そんなものはステージ上にはなかったんだ。

元気をもらったあの笑顔も、勇気をもらったあの歌も、彼女はそんなつもりじゃなかったんだ。

たくさんの人に愛されて、そんな自分を好きになることもなかったんだ。

 

無理をさせていたんだ、と知った時、それまでに注いだ愛情まで申し訳ない気持ちになりはしないだろうか。

あの子をやめさせるために、自分はお金を注いでいたんだと知った時、むなしくなりはしないだろうか。

それでも、「本当のファンなら」喜んであげるべきなんだろうか。

 

今までを否定するみたいな、そんなこと聞きたくない。

余りにも現実。本当のことだとしても。

 

過去を否定しないでほしい。

その時間を黒歴史のように捉えないでほしい。

 

まるで、いけない商売から足を洗うような。

 

 

重ねて言うが、これが引退理由の全てだと信じている訳ではない。(だからと言って、嘘だと疑っている訳でもない。)

それに、こんな理由を掲げて引退する橋本さんは悪だ、とか、ファンの人かわいそう、とか思っている訳ではない。

 

たぶん、私はきっと、「アイドルが手っ取り早くお金を稼ぐ手段になっていること」にまず、違和感を覚えたのだろう。

そして、アイドルを続ける動機が「お金を稼ぎたい」という気持ちだけであることが、おおっぴらに宣言されることに抵抗を感じたのだろう。

お金を稼ぐ理由が、家族のためだろうが、本人が豪遊したいためだろうが、そこは関係ない。美談にも醜聞にもならない。

勿論、お金を稼ぐことは醜い行為でもない。

 

私が感じたのは、「お金だけが目的のアイドル」って、夢がないってこと。

その存在を公にされると、アイドルにまとっていてほしい「愛」とか「夢」とか、そんな尊さをはぎ取ってしまう感じがする。

夢見ている世界が、建前によって成り立っている幻想に過ぎないことを思い知らされる気がする。

 

「お金のため"だけ"にやりがいを持つアイドル」に抵抗がある。

そんな私は、まだ成熟していないアイドルファンなんだろうか。

「アイドルは、愛のために、夢のために、ステージに立ってほしい」というのは、自分勝手な願望だろうか。せめて、ステージを降りるまではその幻想をまとっていてほしい、できればステージを降りてからも、というのは、多くを望みすぎだろうか。

一人の女の子に多くを背負わせすぎだろうか。

 

 

考えてみれば私だって、仕事は単なる金銭を稼ぐ手段でしかない。

仕事は単なる仕事でありそれ以上でも以下でもない。仕事にやりがいとか自己成長とかそういうのを求められても困る。働いた分だけお金がもらえたら、それだけで嬉しい。意識低い系の代表みたいな人間である。

そんな私なのに、アイドルには「労働対価は皆さんの笑顔です」ってにっこり笑ってくれることを望んでいる?「お金を稼ぐことよりもやりがいが第一」的な意識高い系の行動を他人には強いている?

私は、私にはできないことをアイドルには求めている?

自分を棚に上げて。それって、余りにも残酷だ。

 

だけど、そんな私でも、求人に応募する時は「社会貢献できるこのお仕事にやりがいを見出して」とか「先輩に憧れて」とか、理由を取り繕う。会社を辞める時だって、「残業代も出ないクソブラック会社にこれ以上付き合ってられません」ってキレてたとしても書類上には「一身上の都合」としか書かない。

そうすることで、社会は円滑に回る。誰かが築いた世界を平和に渡り歩くことができる。それが建前ってもの。本当の理由なんて、必要以上にさらけ出すことはない。

 

おんなじように、アイドルをすることにも、やめることにも、前提として守るべきマナーがあるんじゃないだろうか。

今回みたいに「もうお金を稼いだから続ける理由がない」なんて発言は、アイドルというお仕事に必要な、何か大事な前提を、愛や夢を、壊してしまう。そんな感じがする。

だから、できれば、色んな人々が築き上げてきたアイドルの世界を守ったままで、ファンの人が抱いてきた幻想を保ったままで、去っていってほしい。それが、アイドルと一度でも名乗ったことのある人のマナーじゃないだろうか。

円滑に回っている私たちの建前だらけの世界を、かき乱すようなことはやめてほしいのだ。

そして、自分の好きな世界を否定して去っていくその人を、それでも好きなままでいさせてほしいのだ。

 

 

最後にもう一度だけ念を押すが、橋本さんに対して否定する意図はない。

詳しくない私だから、彼女の発言の真意も理解できていないと言われたらその通りだと思う。彼女が乃木坂46の中でどういう存在だったのか、ファンが何を今思っているのか、調べることもしない。

 

ただ考えたいのは、私の中の"もしも"。

"もしも""私の"愛するハロプロのメンバーが、あんなに楽しそうに歌い踊っていたのに、幸せそうに歓声を浴びていたのに、「もうお金は稼いだから、これからは好きなことをしたい」と去っていったら?

それでもその人を愛していられるか?アイドルの世界に夢を見られるか?

 

……今は、それを考えただけで、胸が痛く、せつない。

 

できるだけ長く、夢を見ていたいなぁ。